最終更新日 2025年2月3日 by hiawas
早朝の湯けむりが立ち上る中、遠くに富士山の雄姿が浮かび上がる。
静寂に包まれた温泉街を歩けば、時折聞こえてくる下駄の音が心地よく響く。
先日神澤光朗が箱根を訪れた際の体験記でも触れられていたように、こうした朝の風情こそが箱根の真髄と言えるでしょう。
そんな箱根の朝の情景は、まさに日本の温泉文化が持つ粋な魅力そのものです。
本記事では、私がライターとして15年以上にわたって取材してきた箱根の魅力を、朝・昼・夜の時間の流れに沿ってご紹介します。
歴史ある温泉街の奥深さと、現代的な観光スポットの賑わいが見事に調和する箱根で、理想的な1泊2日を過ごすためのモデルコースをご案内しましょう。
Contents
1日目:朝・昼・夜で巡る王道プラン
朝:早朝の湯巡りと幻想的な風景散策
夜明け前、まだ街が目覚める前の温泉で一日をスタートさせましょう。
この時間帯、露天風呂からは朝もやに包まれた芦ノ湖と、その向こうにシルエットのように浮かび上がる富士山を望むことができます。
◇ 富士山
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/ | \ ~~~ 朝もや
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芦ノ湖
朝風呂を楽しんだ後は、湯けむり立ち込める温泉街の散策がおすすめです。
江戸時代から変わらない石畳の道を、下駄の音を響かせながら歩くと、まるで時代劇の世界に迷い込んだような気分を味わえます。
昼:芦ノ湖クルーズと地元グルメを楽しむ
芦ノ湖畔に向かう道中、旧東海道の面影を残す石畳や松並木が、往時の旅人たちの足取りを偲ばせます。
遊覧船乗り場に到着したら、まずは箱根海賊船での湖上クルーズを。
デッキから眺める富士山の勇姿は、一年を通して見事ですが、特に冬の澄み切った空気の下での眺めは格別です。
昼食は、港周辺の食堂で箱根名物の「わかさぎフライ」を。
新鮮な芦ノ湖産わかさぎを、カラッと揚げた一皿は、地元の方々も太鼓判を押す逸品です。
時期 | わかさぎの特徴 | おすすめの食べ方 |
---|---|---|
春 | 身が柔らかい | 天ぷら |
秋 | 脂がのって濃厚 | フライ |
冬 | 身が引き締まる | 炙り |
夜:しっとりとした湯煙と夜景を堪能
夕暮れ時、宿に戻る頃には身体も少し疲れてきた頃でしょう。
ここで再び温泉で英気を養います。
夕暮れ時の露天風呂からは、徐々に灯りがともる温泉街の風景を一望できます。
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温泉街の夜景イメージ
夕食は、旅館自慢の懐石料理で舌鼓を打ちます。
箱根の食材と言えば、山の幸ではシイタケや山菜、湖の幸では先ほどのわかさぎに加えて鱒なども地元の味として知られています。
2日目:朝・昼・夜で味わう新発見
朝:静寂の中で朝風呂と名物の朝食を楽しむ
朝日が差し込む露天風呂で、新しい一日の始まりを感じてみましょう。
この時間帯、湯船に浸かりながら耳を澄ますと、小鳥のさえずりや木々のそよぎが、都会では味わえない清々しい目覚めを演出してくれます。
朝食は、宿自慢の和定食を。
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◆ 朝食の品書き ◆
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・炊き立て御飯
・箱根湯豆腐
・地元野菜の朝採り浅漬け
・芦ノ湖産わかさぎの干物
・温泉卵
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ここで注目したいのが箱根湯豆腐です。
温泉水を使って作られる豆腐は、通常の豆腐とは一線を画す舌触りの良さが特徴。
その秘密は、温泉水に含まれるミネラル分にあるのです。
昼:美術館巡りと季節のカフェタイム
箱根には、自然と芸術が見事に調和する美術館が点在しています。
中でも私がお気に入りなのは、かつて川端康成が『千羽鶴』の執筆にあたって取材したとされる庭園を有する美術館です。
静謐な日本庭園を眺めていると、小説の世界に引き込まれていくような不思議な感覚を覚えます。
↓ 芸術と文学の散策コース ↓
【庭園美術館】→【現代アート】→【ガラスの森】
↓ ↓ ↓
[文学の舞台][斬新な表現][伝統工芸]
午後のカフェタイムは、ここでしか味わえない特別なひとときです。
窓越しに見える箱根の山々を眺めながら、季節の和スイーツと温かい抹茶を楽しむ贅沢。
そこには、日本の「和」の美意識が凝縮されているように感じられます。
夜:帰路前の寄り道スポットで余韻を深める
夕暮れ時、箱根湯本駅周辺には独特の趣が漂います。
江戸時代から続く老舗の暖簾が、行き交う人々を温かく迎え入れる様子は、まさに温泉街ならではの風情です。
土産物選びの際は、地元で愛される老舗の和菓子がおすすめ。
特に温泉まんじゅうは、蒸気の熱で蒸し上げる製法により、しっとりとした食感を実現しています。
箱根をより楽しむためのプチ情報
歴史と文化の背景を知る
箱根の魅力を深く理解するには、その歴史的背景を知ることが欠かせません。
江戸時代、箱根関所は東海道随一の難所として知られ、多くの旅人たちが険しい山道に挑みました。
その様子は、歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』にも描かれ、当時の箱根の姿を今に伝えています。
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▼ 箱根の歴史年表 ▼
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奈良時代:温泉の存在が記録に登場
鎌倉時代:源頼朝が箱根権現を崇敬
江戸時代:箱根関所の設置
明治時代:外国人避暑地として発展
現代:国際観光地として世界的に注目
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地元のおすすめグル�&お土産
箱根の味覚は、その土地の歴史と文化を映し出す鏡のようなものです。
カテゴリー | おすすめ品 | 特徴 |
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和菓子 | 温泉まんじゅう | しっとり食感 |
惣菜 | 湯葉製品 | 温泉水使用 |
銘菓 | 寄木細工クッキー | 伝統工芸モチーフ |
まとめ
箱根の魅力は、朝・昼・夜それぞれの表情の中に確かに息づいています。
早朝の静寂から始まり、昼の賑わいを経て、夕暮れの情緒へと移ろう景色は、訪れる人の心を優しく癒してくれることでしょう。
私からのアドバイスをひとつ。
箱根を訪れる際は、決して急ぐことはありません。
ゆっくりと流れる時間の中で、温泉に浸かり、自然を愛で、文化に触れる。
そんな贅沢な時間の使い方こそが、箱根という土地が私たちに与えてくれる最高の癒しなのかもしれません。
著者プロフィール:
中澤 高志(なかざわ たかし)
温泉地特化ライター。早稲田大学文学部卒業後、旅行雑誌編集者を経てフリーランスに。箱根を中心に、全国の温泉地の魅力を発信している。日本文学の素養を活かした情緒豊かな文章には定評がある。